ゲージ?ヒッグス統一模型の大統一理論へ拡張した理論を構築し、クォーク?レプトンの質量階層性も再現することに成功
プレスリリースはこちらから
この研究発表は下記のメディアで紹介されました。
◆10/19 マイナビニュース(WEB)
本研究のポイント
◇ゲージ?ヒッグス統一模型の大統一理論へ拡張した理論を構築。
◇クォーク※1?レプトン※2の質量階層性※3も再現することに成功。
概要
? 大阪市立大学大学院理学研究科 丸 信人(まる のぶひと)准教授と同研究科 後期博士課程1年生の矢田貝 祥貴(やたがい よしき)さんは、素粒子標準模型におけるヒッグス場を高次元ゲージ場の一部とみなす5次元ゲージ?ヒッグス統一理論を大統一理論に拡張した理論を構築し、電弱対称性の破れ※4およびヒッグス粒子※5の質量を再現できただけでなく、クォーク?レプトンの質量階層性も不自然なパラメタの微調整をせずに再現することに成功しました。
本研究成果は、2020年10月9日(金)、「The European Physical Journal C」に掲載されました。
※1クォーク…原子核を形成する陽子等(ハドロン)を構成する6種の素粒子の総称。
※2レプトン…電子や電子ニュートリノなどの6種の素粒子の総称。クォークとともに
物質の基本的な構成要素となる。
※3質量階層性…標準模型では予言できないクォークとレプトンの質量間にある6桁にも
及ぶ階層性のこと。
※4電弱対称性の破れ…電磁気力と弱い力を統一する電弱理論において、対称性が自発的
に破れている現象。
※5ヒッグス粒子…標準模型で用いられるヒッグス機構において、質量の起源として
作用する粒子。
研究内容
? 本研究では、その拡張の1つである5次元SU(6)ゲージ?ヒッグス大統一理論を構築し、上記の問題を一挙に解決しました。大統一理論は、上記3つの力を1つの力に統一する野心的な理論です。またこのゲージ?ヒッグス統一理論では、ヒッグス粒子が5次元ゲージ粒子の余剰次元成分に同一視され、ヒッグス粒子とゲージ粒子をも統一する理論です。このような野心的な理論は未だ完成しておらず、現実的な模型構築は重要な研究課題となっています。
本研究では、その第1歩としてクォーク?レプトンのみならず、標準模型に含まれない物質粒子を追加でうまく選ぶことにより、標準模型で生じる電弱対称性の破れが実現され、ヒッグス粒子の質量を再現するシンプルな模型を構築することに成功しました。また、5番目の空間の境界に局在するゲージ粒子の運動項を導入することで、再現することが困難なトップクォークの質量も含めたクォーク?レプトンの質量階層性を、パラメタの不自然な微調整をせずに再現することにも成功しました。
成功の鍵は、今回構築したゲージ?ヒッグス大統一理論では、ヒッグス粒子のポテンシャルおよび湯川結合はゲージ対称性の要請により、ヒッグスポテンシャル中のパラメタや湯川結合定数に対して制限が課され、勝手な値を取れなくなり決まらないパラメタの数が非常に少なくなることです。この著しい性質により予言能力が高まり、上述の研究成果につながりました。
資金情報
日本学術振興会 科学研究費 基盤研究C JSPS KAKENHI Grant Number 17K05420
掲載誌情報
発表雑誌:The European Physical Journal C 80 933 (2020) (IF=4.4)
論文名:Improving Fermion Mass Hierarchy in Grand Gauge-Higgs?Unification
with Localized Gauge Kinetic Terms
著者:丸 信人、矢田貝 祥貴
URL:https://link.springer.com/article/10.1140/epjc/s10052-020-08485-8?wt_mc=Internal.Event.1.SEM.ArticleAuthorIncrementalIssue