【開催報告】近鉄文化サロン共催講座 「大阪と浮世絵 ~描かれた大坂、大阪で描かれた浮世絵~」
? 平成29年11月25日、近鉄文化サロン阿倍野において、本学文学研究科の菅原真弓教授による、「大阪と浮世絵~描かれた大坂、大阪で描かれた浮世絵~」というテーマの講座が開かれました。
今回のテーマである「浮世絵」は、日本国のパスポートの新しいデザインとして葛飾北斎の「富嶽三十六景」が日本の顔にふさわしいということで採用されるなど、注目が高まっています。あべのハルカス美術館でも11月中旬まで北斎展が開催され、来年春には錦絵の創始期の第一人者として知られる鈴木春信展の開催が予定されるなど、大阪を含めて各地で展覧会も開かれており、注目度の高さがうかがえます。
浮世絵というと菱川師宣の肉筆「見返り美人図」、歌川広重の「東海道五十三次」、葛飾北斎の「富嶽三十六景」、東洲斎写楽の「役者絵」、喜多川歌麿の「美人画」などが思い浮かびますが、本講座では「大坂で描かれた浮世絵は、江戸で描かれた浮世絵とどのように異なる特色を持っているのか」ということに着目しました。菅原教授は、『全身像が多い役者絵で比べていくと、役者は美しい所作であくまでも格好よくの「江戸」、あけすけに写実的に、そしてどこか滑稽味のある「上方」という特色がある。』と語り、錦絵の改印(あらためいん)と歌舞伎の上演記録などから推測される作成時期の違いなど詳しい解説を行いました。
そして、「東海道五十三次」を完結させた歌川広重が、歩みを西に向け描いている「近江八景之内」「京都名所図会」「浪速名所図会」をもとに江戸と大坂の違いをさらに考察し、単なる自然景を描いた風景画というよりも、むしろ風俗画として人々のくらし、いとなみが描かれていることに注目し、専門性の高い内容を分かりやすく講義いたしました。
大阪市立大学では、2007年から近鉄文化サロンとの共催講座を実施しています。くらしのさまざまなテーマを本学の教員が専門分野の研究者の視点で、サロン会員の方や一般の方に分かりやすく講義をしていますので、ぜひご受講ください。
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天保5年(1834)、中山道広重美術館蔵
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